大切にしたいもの

「大きなテレビがあっていいなぁ」

これは、お友達の家に遊びに行った後、わが子たちが必ずといっていいほどつぶやく言葉である。

そう、わが家のテレビは小さい。なにせ結婚当初から10年以上使っている代物だ。

買い替えない理由、それは私も主人もたいしてテレビを観ないから。私はテレビを観るよりも音楽を聴くほうが好きだし、主人は家でテレビを観る時間があるなら外に出かけたいタイプ。そんなわけで、大きなテレビが場所をとってまでわが家に存在する理由もなく、子どもたちには申し訳ないが、いまだ買い替えるに至っていない。


もっと踏み込んだ話をすると、わが家は建売住宅だ。私たち夫婦は、家に対して見た目にも中身にも特に強いこだわりはなかったので、立地が気に入ったという理由で今の家を選んだ。

主人はどうか分からないが、私の性格的に、この選択は正解だったと思っている。例えばもし、立地から建物までこだわった注文住宅を建てたとする。それだけでも背負うものは大きいが、綺麗な宝石箱には綺麗な宝石を入れたくなるのが私の性分。家具、庭、車。何もかも、身の丈以上のものを欲していたことと思う。そう考えると、今のこの家が、私にはとても心地よい。子どもが汚したって猫に破壊されたって、目くじらを立てることもなく、綺麗にすればいいし直せばいいと気楽に構えていられる。


何を言いたいのかといえば、要は暮らしの中で「何に価値を感じて、大切にしたいと思うか」ということだ。

今の私が価値を感じて大切にしていることといえば、主人や子どもたち、そしてペットとの暮らしを楽しむこと、小さな庭を育てること、洋服や美容を楽しむことだろうか。主人は主人で、今はゴルフに熱中していて、練習やラウンドを楽しんでいるようだ。

大きなテレビも、注文住宅も否定するつもりは決してない。自宅で映画を楽しむことが好きな人にとっては大きなテレビ画面で迫力ある映像は魅力的だろうし、こだわりの家に住み、毎日そこで過ごす時間に幸せを感じる人もいるだろう。ただ、私たちには選択外になったというだけのこと。

限られた収入や資産をどう使い、幸せを感じるのかである。

周りに合わせてとか、見栄とか、そういうことに振り回されて、自分にとって何が大切で価値を感じるのかを見失うのは本当につまらないことだ。


このことはよく子どもたちにも話している。お金の使い方、とまではいかないけれど、自分が心から好きだと思えることにお金を使いなさいということを伝えている。

それもあって、最近は子どもたちに「将来何になりたいの?」という聞き方ではなく、「大人になったらどんな風に暮らしたい?」と聞くようになった。自分の理想的な暮らし方が見えてくれば、自ずとやりたい仕事も見つかるような気がするから。

長女は柴犬を飼って、猫も飼いたいと話してくれる。息子は、釣りをしたり虫を探したり、自然の中で暮らしたいそうだ。次女は可愛らしく、カフェの店員さんがしたいと言っている。彼女の場合はやりたい仕事の延長線上に、理想の暮らし方を見つけてくれるといいなと思う。

将来子どもたちがそれぞれの家庭、もしくは家を持ったときに、何を大切にした暮らしをしているのかが見えてくることと思う。今から楽しみだ。

…もしも子どもたちがみんな大きなテレビを買っていたら、親子とはいえ価値観は違うんだなぁとちょっと笑ってしまうと思う。

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